八石潭の由来
潭陽石(花崗石)の特徴
九つの岩の物語
・潭陽石(花崗石)の特徴
潭陽石は伝統的な花崗石であり、精巧に加工するほど黒色の光沢が出る石である。日本では葬墓石に活用しており、輸出産業として脚光を浴びたりもしている。1985年に潭陽郡武貞面徳谷里で採石を始めてからこれまで約6㏊が開発され、110万トン余りの良質の潭陽石を生産して国内外で建築・工芸・土木用に使われて来た。
・九つの岩の物語
潭陽郡鳳山面錡谷里ソンサン村には、今は痕跡さえ残っていないが、伝説に係わる九つの岩があったと伝えられている。1914年までは今の鳳山面(ボンサンミョン)は九巌面(クオムミョン)と呼ばれていた。いつからの話かははっきりしないが、遠い昔、全氏の姓を持つ一人の若者と母親が暮していた。全氏の家はあまりにも貧しく三度の食事も食べられず、苦しい生活をしていた。弱り目に祟り目とはこのこと、母親まで病床についてしまった。ちょうど凶年になって日雇いの仕事もできなくなり、炭を焼いても売ることができないので、山菜を食べて何とか命拾いをしていた。病床にいる母は死を目の前にしており、若者も全身がぶくぶくに腫れて浮黄(飢えて皮膚がむくんで黄色くなる病気)にかかってしまった。母が米の飯を一杯だけ食べることができたら思い残すことなく死ねると溜息をつくのを見た息子は、思い余って病気の体に鞭打って物乞いに出掛けた。しかし、米を手に入れるのは並大抵のことではなかった。世間の人々の人情は凶年と共に薄くなるだけ薄くなってしまった。数日間、死にかけの体で歩き回り、帰る道で金持ちの家の前に犬が吐いた一杯分の米飯を発見した。若者はその米飯を集めて小川に行って何度も洗い、新しくご飯を炊いて母親に食べさせた。経緯を知らない母親が病床から起きてそのご飯を美味しそうに食べている姿を眺めていた息子は心の中で泣きに泣いた。その時だった。突然芳しい煙が家を包み、天から燦爛たる光が若者に照らされた。すると若者は深い眠りに落ちて夢の中で天使に出会った。天使は一つの巾着を若者に渡しながら、「おまえの親孝行が素晴らしいので九つの願い事を叶えてあげよう。願い事がある度にきれいな水に浸かった岩を持って来て祭壇を作り、その上に巾着を置いて願い事を言いなさい」と言った。彼は夢から目覚め、手に握っている巾着を発見した。その後、若者は身に余る願い事は一度も言わず、ただ母親に対する願い事だけを言った。最初の祭壇には米飯一杯を願い、八つ目の祭壇には年老いた母親の目が見えることを願ったというから、その祭壇に願った内容を推測できる。その後、健康な体で長生きできず、結局母親がこの世を去ることになった。若者は九つ目の岩の祭壇の前で母親の側で母親と一緒に死なせてほしいと願い、死さえも母親と共にした。その後、九つの祭壇も雨風と一緒に歳月の流れの中で消え去り、現在は平坦な一般道路になって美しい伝説だけが伝えられている。